戻る
テニスにおける怪我との向き合い方 ~症状のうちに対処を!!偏~
イメージ

 「最近、腕の筋肉が張って、テニスをすると痛い。だけど、しばらくしたら痛みがなくなったから治りました」。このような話をよく聞きます。果たしてこれは怪我だったのでしょうか?!そして、問題ない考え・行動でしょうか?!

 頭が痛くて、病院に行ったとしましょう。先生に「頭が痛いです」と伝えても、先生は「それは病気です。」とは言いません。これは病気ではなく、症状です。腕の筋肉が張って痛かったのも、怪我ではなく症状です。

 症状とは、病気や怪我によって起こる身体の状態変化(異変)です。身体に何も問題がなければ痛くもないし、かゆくもありません。よって、症状は身体から発せられる異常事態の信号と言えます。「腕の筋肉が張って、痛かった」。これも、身体から発せられた異常信号、即ち症状です。これを多くの場合、「痛みがなくなった」=「治った」、と捉えがちです。「治った」=「問題なし」、と捉えてしまう事も多いと思います。ここで、覚えておいてほしいのが、「症状を感じたこと自体が問題」という事です。

 テニスだけではありませんが、症状が出た多くの場合、何もしなくても、時間の経過と共に症状がなくなり、大きな問題になる事はありません。しかし、症状を軽視した結果、後に大きな問題になるケースもあります。アスレティックトレーナーとして活動していて、「なぜもっと早く対処しなかったのだろう」というケースに直面します。もっと早く対処していれば、ここまで大事に至らなかったというケースです。

 先ほども述べたように、症状は身体から発する異常信号です。その異常信号が小さく、一度だけでは大きな問題にはなりません。しかし、その症状が出た原因が、自身のスイングフォームにあった場合どうでしょうか?!過度にグリップを厚くし、トップスピンをかける。その結果、腕(前腕:肘から手首にかけて)の筋肉が張っていたとしたら?!確かにしばらくして、張を感じなくなっても、自身の打ち方が原因だとしたら、テニスを再開し、また症状を生む。これを繰り返すことにより、腕の筋肉が慢性的に硬直。腱や関節に損傷を及ぼし、結果テニスエルボーになってしまった。こういったケースがあります。

 では、どうすれば良かったのか?!最初に「腕の筋肉が張り、痛くなった」時点で、「症状がなくなったから問題でない」、ではなく、「なぜ腕が張ったのだろう?!」と、考えるべきです。特に初期症状はとても大事です。今までなかった症状が現れた場合、症状が現れる直前に行った変化/行為/状態が、症状、即ち身体に異常信号を与えた原因の可能性が高いからです。

テニスで多い例として

  • 打ち方/スイングを変えた
  • グリップを変えた
  • ラケットを変えた
  • ガットの種類/テンションを変えた
  • いつもと違うサーフェスでテニスをした
  • 練習量が増えた
  • いつもより球が速い/重い/跳ねる相手と練習/試合をした
  • トレーニング方法を変更/追加した
  • 雨が降り、ボールが重い中、練習/試合をした

 などが挙げられます。「雨が降りボールが重くなった」、「いつもより球威の強い選手と練習/試合をした」、などは一過性の出来事なので、一回の症状で治まる可能性があります。しかし、打ち方やラケットなどが症状の原因である場合、原因を変えない限りそのままです。要はテニスをすればするほど、身体に負担をかけている状態、と言えます。このような状態でも、練習や試合の間にオフがあれば、症状が治まる可能性があり、それを「問題ない」「治った」と解釈してしまう事があります。もしくは「時間の経過と共に治るだろう」という考え方。ここに大きな落とし穴が存在するのです。

 テニスに限らず、スポーツは往々にして、通常の生活以上に身体に負担をかける行為です。スポーツに耐えうる身体を作り、しっかりケアすれば大丈夫ですが、それらをおざなりにし、ただただ自身のスポーツを邁進していると、取り返しのつかない事態になるかもしれない。そうならない為にも、

-症状と向き合う

-症状が出た原因を出来るだけ突き止める

-特に初期症状には注意する

という癖をつける事をお勧めします。

 例え症状が長引いても、見て見ぬふりをして、症状がありながらもテニスを続けてしまったケースを、残念ながらよくみます。それらの要因は「テニスを休みたくない」「大事な試合がある」「練習パートナーに申し訳ない」等です。そして何より、症状の原因を特定しないまま、先に述べた「時間の経過と共に治るだろう」という考え方です。

 怪我の中には、正直「治らない」「元に戻らない」ものがあります。そして、もっと早く対処していれば、「治る」怪我もあります。繰り返しになりますが、症状は身体が教えてくれる異常信号です。それを、スポーツをするのであれば、尚の事敏感に捉えるべきだと思います。取り返しのつかなくなる前に、症状が出た場合、是非一度専門家に相談してください!!

筆者情報

プロテニストレーナー&テニスコーチ

菅尾 祐助

小学生からテニスを始める。高校卒業後渡米し、アスレティックトレーニングを学ぶ。帰国後、菅尾アスレティックトレーニングセンター(S.A.T.C)を設立し、アスリートやスポーツ愛好家の怪我やリハビリ、トレーニング、コンディショニング等をサポート。また、はちおうじ庭球塾(八王子テニススクール)にて、ジュニア育成に従事。

怪我やトレーニング、テニスサポートのご相談はS.A.T.Cまで。
ジュニア育成は、はちおうじ庭球塾まで。
お問い合わせはこちらから。

(株)S.AT.C 代表取締役
テニスメディカルトレーニングラボ(TMTL) 代表
はちおうじ庭球塾 塾長
特定非営利活動法人スポーツライフネットワーク 代表理事
鈴木慶やすらぎクリニック アスレティックトレーナー
境界なきアスリートサポート 共同代表

米国公認アスレティックトレーナー (NATA-ATC)
米国公認ストレングスコンディショニングスペシャリスト (NSCA-CSCS)
インターナショナルテニスパフォーマンス協会公認
テニスパフォーマンススペシャリスト (ITPA-CTPS)
アメリカプロテニス協会公認 プロフェッショナルテニスコーチ
アスレティックトレーニング修士 (MS)

戻る