2020.3.15
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テニスメディカルトレーニングラボ
テニスメディカルトレーニングラボ(以下:TMTL)では、
テニス選手に必要なトレーニングや怪我等の情報を中心に、
分かりやすくお届けしています!!
TMTLとは?
TMTLでは、テニスコーチでありアスレティックトレーナーでもある筆者が、テニス情報を発信しています。医学的に裏付けられた情報だけでなく、経験談や主観的意見等も発信しています。
TMTLの特徴
テニスのみならずアスリートがその道で戦い、勝つ為には、技術練習だけでは不十分です。テニス界ではトッププロに限られますが、様々な専門家を“チーム”として招聘しています。主な役割として、技術スキルや全般的に選手をサポートし管理するコーチ。フィジカルトレーニングを主に担当するストレングス&コンディショニングトレーナー。ドクター。怪我や日々のコンディショニングをサポートする、アスレティックトレーナーックトレーナーや治療家。加えて、栄養士やメンタルトレーナーを付ける選手も増えてきています。さらに、テニスにおいては情報分析するアナリスト。道具も大きな要素ですから、スポーツメーカーやストリンガー。などなどサポートする専門家は多岐に渡ります。
TMTLでは、主にフィジカルトレーニングや怪我のサポートを中心にまとめています。またテニススキルに関しては、コーチ目線だけでなく、トレーナー、すなわち“身体の使い方”目線からテニススキルを紐解いていきます。
2020.3.15
数あるスポーツ道具の中で、今回はテーマは「サポーター」です。テニス選手でサポーターを使用している人は多いと思います。ここ近年、多くのメーカーが様々な種類のサポーターを製造・販売をしております。その為、各メーカーで特徴が異なり、サポーターの選び方や使用方法等、悩む事もあるかと思います。サポーターの種類や、使う人の状態や状況によって、サポーターとの関わり方が異なります。それを知らずサポーターを使用する事で、助けになるどころか、逆に体の害になってしまう事もあります。そんな中、本コラムでは、テニス選手として、どのようにサポーターを用いれば良いのか?!をテーマに、以下3点について話を進めていきたいと思います。
①足首や膝関節などの関節サポーター
②腰ベルト
③テニス肘用のサポーター
①足首や膝関節などの関節サポーター
靭帯や関節で起こる怪我予防や、痛みや腫れ等の症状軽減、怪我の再発防止等に用いられる関節サポーター。テニスでは、足首や膝に使う人が多いと思います。関節サポーターの大きな役割は「関節での動きの制限」です。関節とは、骨と骨の接合部分。その骨と骨を結んでいるのが「靭帯」です。テニスで怪我の発生率が高い「捻挫」は、この靭帯を伸ばしてしまったり、切れた状態の事を指す怪我です。また、半月板や軟骨組織などの損傷で、症状が起こる場所が「関節」です。これらの怪我や症状の悪化は、主に関節に動きが起こる事で生じます。その為、関節サポーターは、関節の動きを制限する事で、怪我の悪化や痛み等の症状がなるべく出ない様にする為に、使われます。
関節サポーターを積極的に用いるべき時は、怪我の後や、リハビリ等を終えたばかりの競技復帰段階です。例えば、足首の捻挫。捻挫の主な初期症状は痛みと腫れ。痛みは関節が動いたり、体重が患部にかかる事で発生します。また、受傷直後は「炎症期段階」で、関節を動かす事で、腫れが増す可能性があります。要は関節が動く事により、症状や状態悪化の可能性があるので、足首を固定する為に関節サポーターを用いる、という理屈です。また、怪我をした箇所をもう一度捻じってしまう事(二次的な怪我)を防ぐ為にも有効といえます。
それでは、捻挫等の怪我が完全に治り、サポーターを使用しなくても、怪我以前のプレーができるようになった場合、関節サポーターの使用を続けるべきか?!結論から言うと、この問いに完全な答えはなく、選手の選択や、その時の状況で判断が変わります。仮にサポーターの使用を続けるとしたら、理由は怪我の予防・再発予防の為になります。特に捻挫による靭帯損傷。軟骨や靭帯など、一度の損傷により、痛みなどの症状は消失しても、機能自体が元に戻らない組織もあります。その為、再度同じ怪我をする可能性がある為、関節サポーターを用いて、再発予防をします。本理由で関節サポーターを使用し続ける事は、個人的には賛成です。しかしながら、関節サポーター使用の理由は、先ほども述べたように「関節での動きの制限」です。関節サポーターの使用=本来は動く場所である関節の動きを制限する事、と言えます。本来動くべき関節の動きを固定すれば、身体全体に影響が波及します。要は、関節サポーターを使用している部位だけの問題ではなく、身体全体の問題になるという事です。一度骨折等の怪我をして、ギブス固定等をした経験がある方は非常にご理解いただけると思いますが、身体の一部の機能を固定すると、本当にいつも通りに生活をする事が困難になります。それだけ、本来ある機能を制限するという事は、身体全体の問題になるという事です。
左右差も考慮しなければなりません。例えば、片足首に関節サポーターを用いれば、逆の足首と動きが異なります。足首の動きが左右で異なれば、当然歩行などの姿勢にも影響します。これらの事を考慮し、その対応を講じながら関節サポーターを使用するべきと考えております。特にテニスは、多かれ少なかれ、関節を大きく柔らかく使うスポーツなので、仮にサポーター使用をドクターやトレーナーサイドが提案した時、拒否したり、できれば使用したくない、と主張する選手もいます。それが上記で挙げた、「選手の選択やその状況で変わります」という所以です。
②腰ベルト
ヘルニアや分離症等、腰の怪我を患った選手が使用する腰ベルト。所謂、腰の怪我を患っている最中は、テニスをプレーする以前の問題で、私生活の座る・立つ等の何気ない動き・姿勢でも痛み等の症状がある為、積極的に腰ベルトを使う事になります。問題は、怪我が治り、テニスに復帰した後になります。怪我から復帰した際、いきなり試合やラリー等は行わず、素振りや軽いジョギング、ミニテニスなど、徐々に運動量を上げていく事が通例です。その際、誤って腰に負担をかけてしまい、痛みなどの症状が出ないよう、または減らすよう腰ベルトの使用は有効と言えます。しかし、徐々に運動量が上がり、怪我を患う前と同等のレベルまで戻れば、基本腰ベルトから卒業する事が望ましいです。腰ベルトの主な機能は、腰回り(腰部)を安定させる事です。それは即ち、筋肉の代わりをする事を指します。とりわけ、怪我を患っている期間、運動量が落ちるので、筋力が多かれ少なかれ落ちてしまいます。腰ベルトの怖いところは、筋肉の代わりをする事に、装着している本人が当たり前の感覚になってしまい、ベルトを外す事が怖くなってしまう事です。実際、腰ベルトを装着する事で、腰回りを含めた体幹部は安定します。その感覚から脱却する為には、腰ベルトが必要ない筋力をつける事です。その為、競技復帰する=十分なリハビリをしている事が前提になります。腰ベルトは徐々に離脱すればよいのです。例えば、ミニテニスやウォーミングアップなど、身体の負担が比較的少ない時に外して行い、ラリーや試合形式など、運動量が高い時には装着。そのまま筋力トレーニングは継続し、徐々にラリーや試合でも装着せず行えるようにする事が理想です。しかしながら、怪我の病態や状況は一人ひとり異なるので、個別のケースは必ず担当医と相談した上で、決めるようにして下さい。
③テニス肘用サポーター
そもそも論の話になりますが、サポーターはその名前の通り、あくまで”サポート役”です。テニスをして、肘が痛くなると、大抵テニスエルボーを疑います。ドクターや治療家の先生の治療や助言、リハビリをしながら、テニスエルボーサポーターを使用し、症状が悪化傾向にならない範囲のプレーであれば大丈夫です。しかし、ドクターや治療家の先生のサポートを受けず、テニスエルボーサポーターを独自の判断で使用し、テニスを続けてしまうケースがよくあります。テニスエルボーは炎症を伴います。その為、テニスエルボーサポーターを使用しながら、特に専門家のサポートを受けなくとも、炎症が治まり、症状が悪化しないケースもあります。しかし、逆に悪化してしまうケースも多々あります。なぜならテニスエルボーサポーターは、肘への衝撃を緩和し、結果痛みの感覚を軽減します。しかし、先ほども申した通り、サポーターはあくまでサポート。痛みが軽減した=治ったわけではないのです。肘の病態はそのまま残っているのです。特に、テニスエルボーは難治性と言う、中々完治しないケースになってしまう事があります。テニスを休みたくない、という気持ちから、テニスエルボーサポーターで痛みをある種”ごまかしながら”プレーを続ける事は、絶対に避けるべきです。腰ベルト同様、いずれテニスエルボーサポーターから脱却する事を前提に、テニスエルボーと向き合いながら、あくまでサポート役として、用いるべきです。
まとめ
冒頭申し上げましたが、道具の進化に伴い、以前より格段にパフォーマンスアップや怪我の予防、症状の軽減ができるようになりました。その高い機能性から、無意識のうちに道具に頼りすぎている時もあります。サポーターの種類や、使う選手の状況により、どのようにサポーターと関わるべきか異なります。できればサポーター使用開始時、専門家に意見を仰ぎ、一人ひとりに合った上手なサポーターとの関わりをしていただければ、と思います。