2020.10.1
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テニスメディカルトレーニングラボ
テニスメディカルトレーニングラボ(以下:TMTL)では、
テニス選手に必要なトレーニングや怪我等の情報を中心に、
分かりやすくお届けしています!!
TMTLとは?
TMTLでは、テニスコーチでありアスレティックトレーナーでもある筆者が、テニス情報を発信しています。医学的に裏付けられた情報だけでなく、経験談や主観的意見等も発信しています。
TMTLの特徴
テニスのみならずアスリートがその道で戦い、勝つ為には、技術練習だけでは不十分です。テニス界ではトッププロに限られますが、様々な専門家を“チーム”として招聘しています。主な役割として、技術スキルや全般的に選手をサポートし管理するコーチ。フィジカルトレーニングを主に担当するストレングス&コンディショニングトレーナー。ドクター。怪我や日々のコンディショニングをサポートする、アスレティックトレーナーックトレーナーや治療家。加えて、栄養士やメンタルトレーナーを付ける選手も増えてきています。さらに、テニスにおいては情報分析するアナリスト。道具も大きな要素ですから、スポーツメーカーやストリンガー。などなどサポートする専門家は多岐に渡ります。
TMTLでは、主にフィジカルトレーニングや怪我のサポートを中心にまとめています。またテニススキルに関しては、コーチ目線だけでなく、トレーナー、すなわち“身体の使い方”目線からテニススキルを紐解いていきます。
2020.10.1
テニス選手であれば、「よりテニスが強くなる為に!!」「試合に勝つ為に!!」という思い・モチベーションでテニスに向き合っていると思います。具体的に深堀すれば、「強くなる為」「勝つ為」に取り組んでいる日々のメニューはどのような内容になっていますか?「強くなる為」「勝つ為」には、各々テニスの課題があり、それを改善し、試合に臨む。選手であれば、引退するまでこの繰り返しだと思います。今回考えたい事は、その課題を改善する方法論です。
今、皆様の練習内容・時間配分はどのようになっていますか?選手自身で考えたり、コーチや指導者に指摘されている”課題”。時間が限られる中、課題に優先順位をつけ、向き合う。課題改善に励む中、オンコート。所謂テニス技術改善の為に、練習やレッスンに多くの時間を割いていませんか?
先も述べたように、選手一人ひとり課題は異なります。大切な事は、その課題を如何にして改善するか?ではないでしょうか。もし皆様の課題の内容が、「弱い」という事が原因であると考えている場合、それを克服する方法は、所謂テニスの練習なのでしょうか?!
例えば、前後左右に振られた時の切り返しで体がブレる。低いボールに対して、重心を低くする事ができない。サーブを打った後のバランスが悪い。仮にこれらが課題だとした時に、オンコートでの練習で、改善できますか?答えは、「ノー」です。なぜならこれらの課題は、テニススキルの問題ではなく、フィジカルの問題だからです。
もちろん、上記の課題点を、オンコートでの練習で改善できる可能性があります。例えば振り回しの練習をたくさんする事で、徐々に切り返しのフットワークができるようになってきた、という場合。しかし、これらは意図しないにしても、振り回しをたくさんした事がフィジカルトレーニングなっていた可能性があります。切り返しの時に体がブレるのは、体幹が弱い。切り返し時に踏ん張る事ができない下半身の弱さ。バランス能力の欠如。切り返し時の体がブレる課題の原因は、このような事が挙げられます。そして、これらを改善する方法は、フィジカルトレーニングが有効と考えます。
大きな考え方として、「ボールとの距離感が合わない」「ラリーの時のリズムがうまくいかない」「試合展開」等々はテニススキルと捉え、オンコートでの課題改善として取り組むべきです。テニススキルとフィジカル要素は互いの要素が混ざっている事が多多く、どちらかのみで改善できる事は少ないのですが、多くの選手は圧倒的にテニススキル・オンコートでの時間が多いと思います。仮に軽自動車とスポーツカーが競争したら、スポーツカーが勝ちます。運転技術の差ではなく、車としてのスペックが違うからです。テニスに置き換えると、運転技術の向上が、所謂練習です。しかし、スペックが違い過ぎる相手とは、技術の前にフィジカルで負けてしまいます。もし、今の課題がフィジカル要素だとしたら、勇気を出してラケットを置き、フィジカルの改善に取り組むべきなのです。
ラケットを置き、フィジカルトレーニングを中心に行う事の難しさ。大きな理由の一つは、「折角コートがあるのに、トレーニングに使うのはもったいない」という考え方です。もちろん、コートが使用できる時間は限られていますし、お金もかかります。そして、腕立て伏せや腹筋など、所謂基礎筋力トレーニングはあえて限られた使用時間のコート上で行う事はもったいないかもしれません。オフコートやトレーニングジム、家等で行えます。しかし、運動連鎖系や切り返し等が課題の場合は、オンコートでトレーニングするべきです。選手としての目的は「テニスをする事」ではなく「テニスが強くなる事」。仮に切り返しが上手くいかない選手が、そのままラケットを持ち続けながら練習を行うより、ラケットを置き、切り返しのフットワークをゆっくり確認する。そこから徐々にスピードを上げ、シャドー等で動作を確認。メディシンボールスロー等も大変有効的です。下半身や股関節周囲・体幹等が、弱く切り返し動作が出来ないのであれば、基礎筋力トレーニングも追加しましょう。そこからラケットを持ち、実際に球を打ちます。フィジカル要素が欠落していながら、テニススキルが改善・向上する事は難しいと思います。
ラケットを置く事の難しさのもう一つが、皆、テニスが好きだという事です。テニスコートに行き、「さぁ、トレーニングをするぞ!!」と言われて喜ぶ選手は少ないでしょう。テニスが強くなりたい、という目的と同時に、テニスをしたい、テニスが好き、という気持ちが、ラケットを置く事の一番の難しさであると思います。ここは、選手自身にフィジカルの必要性を理解してもらうしかありません。正しくトレーニングを行えば、必ずフィジカルは向上します。ただ、多かれ少なかれ時間がかかるのです。これは生理学上、仕方がりません。
こんな時は、私の場合、コーチ・アスレティックトレーナーの立場として、運動連鎖系・身体の使い方系のトレーニングを選択し、選手に行ってもらうようにしています。例えば先に挙げたメディシンボールスロー。軸ブレをしている選手に対し、正しくメディシンボールを投げられるよう指導し、何回か投げてもらう。その時に、身体の使い方。所謂コーディネーションや運動連鎖。これを身体に”体験”させます。そのままメディシンボールからラケットに持ち替えて、ボールを打つと、身体の使い方を感じてもらう事ができます。そのタイミングで、身体の使い方を向上させる為に、トレーニングが必要であると、経験を通じて選手に理解・体感してもらうようにしています。選手自身に感じてもらえれば、フィジカルトレーニングの重要性。トレーニングをする事で、テニスが強くなる事を本当の意味で理解してもらえます。こうなると、選手は進んでトレーニングをしてくれます。
「テニスの練習時間が長い=テニスが強くなる」という構図はありません。今回はフィジカルトレーニングとの対比ですが、実際には栄養面や睡眠。ストレスマネージメントやメンタル要素など、「テニスが強くなる為」の要素は多岐に渡ります。にもかかわらず、オンコートでの練習に、多くの時間や努力を使っている選手が多いのではないでしょうか。まずは、選手として課題の整理。そして、課題の内容がオンコートでの練習での改善ではなく、フィジカル要素であるのであれば、そこに時間と努力を費やすべきです。選手自身としての考え方、コーチ・指導者の考え方。練習環境等々で異なると思いますが、フィジカルを改善する事で、多くの課題が改善する事が多いです。そして、フィジカルを強くする事は怪我の予防にも繋がります。是非、今のトレーニングメニューを見直し、不足してるかな??と思う選手は、フィジカル要素を増やしてみて下さい!!