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テニスにおける重心の下げ方
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 テニスにおいて、重心が大事である事は言うまでもありません。構えから始まり、ストローク・ボレー・サーブ・フットワーク。多くの局面で重心は大事であり、「重心を下げる」事はテニスでは必須のスキルです。

 重心を下げる上で、最初に確認しなければならない事。重心を下げる時、「膝を落とす」と意識する選手がいるかもしれませんが、重心は膝で下げません。重心は、「股関節」で上げ下げをします。

 少し難しい言い方になりますが、重心を下げる時だけではなく、身体を動かす時は脳からの指令が運動神経を介し、各身体の部位に指令が行き、動く。という仕組みになっています。一見同じ動作に見えても、意識する部位が違えば、身体の使い方が変わります。例えば、ストロークの打点時、どこを意識的に使っていますか?!腰や肩、腕といった具合だと思います。そんな中、仮に普段意識している部位と違う部位を意識してストロークを打つと、いつもと感覚が変わると思います。それと同じように、同じ「重心を下げる」、という動作でも、「股関節」と「膝」、意識する場所が変われば、身体の使い方が変わります。その為、重心の上げ下げをする時は、股関節で行う!!と、意識して下さい。

 股関節の周りには膝周囲に比べ、大きく強い筋肉が沢山あります。その為、股関節を意識して重心を上げ下げする事で、より力強く下半身を踏ん張る事が出来ます。下半身の重心は、主にお尻(臀部)と腿(もも)の筋肉が大事になります。膝を意識して重心の上げ下げを行う場合、股関節を意識するのに比べ、お尻や腿の筋肉がうまく使われません。そして、膝を意識する事で、痛めてしまうリスクもあります。 何より、重心の上げ下げにおいて、そもそも膝の高さはほぼ変わりません。あくまで「股関節」を意識的に使うように心がけてください。

 重心の上げ下げの練習や意識は「スクワット」で説明ができます。スクワットは主に太腿やお尻(臀部)の筋力トレーニングで、重心の上げ下げをする事で、負荷をかけるトレーニングになります。スクワットが正しい姿勢でできれば、即ち「正しい姿勢で重心の上げ下げができる」事になります。しかしながら、テニスコートやS.A.T.C内で、選手やスポーツ愛好家の皆さまのスクワット姿勢を見させていただいておりますが、初めから正しくスクワット姿勢が作れる人は少ないです。人によっては以前スクワットをした事で、「膝を痛めてしまった」という事もあるくらいです。スクワット姿勢の正しい作り方は以下になります。

 立ち位置は:

① スタンスは肩幅かやや広くする

② つま先の位置を揃え、やや外方向に向ける(15度程度)

 重心を下げる時:

① 背筋が丸まらないように立たせる(骨盤をやや前傾意識)

② 股関節を意識し、重心を下げていく

③ 膝がつま先より前に出ないようにする

④ 膝が内/外側にいかないようにする(つま先の延長上に位置するようにする)

⑤ 重心が前(つま先)や後ろ(かかと)、内や外方向に行かないよう気を付ける

 それでは正しい姿勢と誤った姿勢を、それぞれ写真で確認してみましょう

正しいスクワット姿勢(正面)

 膝と足の外側にある赤い矢印で、つま先と膝の方向が同じになっている事が確認できます。また、足から上に直線を引くと、膝が位置しています。右足・左足に偏りがなく、均等に体重が乗っている事も確認して下さい。体幹軸の真っすぐを意識し、胸を張るイメージ。目線は前方向です。

誤ったスクワット姿勢(正面)

 正面向きで一番多いエラーが、足から上の直線上に膝が位置していない事です。上の写真は膝が内側に入っています(ニーイン)。足から上の延長上に膝が位置していないと、下半身の踏ん張りがうまくできず、身体のバランスが崩れてしまいます。怪我のリスクも上がるので、注意して下さい。

正しいスクワット姿勢(側面)

 つま先から上の直線上に線を引くと、つま先より膝が前に出ていない事が確認できます。そして、体幹軸も真っすぐ。骨盤前傾を意識し、お尻(臀部)を後ろに引くようにイメージする事で、正しいスクワット姿勢が作れます。お尻を後ろに引く際、重心まで後ろに下げ、かかと重心になりつま先が浮いてしまわないよう、気を付けてください。

誤ったスクワット姿勢(側面)

 つま先から上に直線を引くと、つま先より膝が前に位置している事が確認できます。スクワットで膝を痛めてしまう一番の原因がこれになります。お尻(臀部)をもっと後ろに位置させ、膝がつま先より前に出ないように意識します。また、膝が前に出る事で、骨盤が後ろに傾き(後傾)、本来であれば斜めの赤線上に上半身が位置しなければいけないところ、背中が丸まっています。この姿勢では、下半身を十分に踏ん張り、体幹軸を立たせた姿勢でのプレーが出来ません。

誤ったスクワット姿勢(足裏の重心)

 足にある赤丸を見て下さい。足の内側(親指側)が地面から離れ、外側(小指側)に重心があります。このエラーは膝が内側に入る姿勢(ニーイン)を改善しようとする時に起こりがちな誤りです。股関節を意識し、膝関節のみ外に開き(結果つま先の上延長上に膝を位置させる)、重心は土踏まずのままにするようにして下さい。

 同じく、足の赤丸を見て下さい。今度はつま先が地面から離れ、かかとに重心があります。これは、膝がつま先より前に出ないように意識した時に起こりがちなエラーです。膝がつま先より前に出ないようにする為には、重心ではなくお尻(臀部)を後ろに引くようにして下さい。

 スクワットは下半身筋力トレーニングとして代表的なものですが、練習が必要です。もし、スクワットをした事で膝関節。特に、お皿の下周囲が痛くなった場合は、スクワットを止め、トレーナー等の専門家にスクワット姿勢をチェックしてもらって下さい。

 スクワットはあくまで右足・左足均等に体重を乗せる姿勢になります。しかしながら、体重移動や右足・左足の体重比率(比重)はプレー中に幾度となく移動します。その為、片足体重がテニス選手においては非常に大事なスキルと言えます。片足重心や片足軸に関しては別コラム「テニス選手としてあるべきスキル 〜片足スクワット編〜」に掲載しておりますので、是非ご参照ください。

また、動画でもスクワットの方法を説明しておりますので、是非参考にしてみて下さい。

筆者情報

プロテニストレーナー&テニスコーチ

菅尾 祐助

小学生からテニスを始める。高校卒業後渡米し、アスレティックトレーニングを学ぶ。帰国後、菅尾アスレティックトレーニングセンター(S.A.T.C)を設立し、アスリートやスポーツ愛好家の怪我やリハビリ、トレーニング、コンディショニング等をサポート。また、はちおうじ庭球塾(八王子テニススクール)にて、ジュニア育成に従事。

怪我やトレーニング、テニスサポートのご相談はS.A.T.Cまで。
ジュニア育成は、はちおうじ庭球塾まで。
お問い合わせはこちらから。

(株)S.AT.C 代表取締役
テニスメディカルトレーニングラボ(TMTL) 代表
はちおうじ庭球塾 塾長
特定非営利活動法人スポーツライフネットワーク 代表理事
鈴木慶やすらぎクリニック アスレティックトレーナー
境界なきアスリートサポート 共同代表

米国公認アスレティックトレーナー (NATA-ATC)
米国公認ストレングスコンディショニングスペシャリスト (NSCA-CSCS)
インターナショナルテニスパフォーマンス協会公認
テニスパフォーマンススペシャリスト (ITPA-CTPS)
アメリカプロテニス協会公認 プロフェッショナルテニスコーチ
アスレティックトレーニング修士 (MS)

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