2020.3.3
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テニスメディカルトレーニングラボ
テニスメディカルトレーニングラボ(以下:TMTL)では、
テニス選手に必要なトレーニングや怪我等の情報を中心に、
分かりやすくお届けしています!!
TMTLとは?
TMTLでは、テニスコーチでありアスレティックトレーナーでもある筆者が、テニス情報を発信しています。医学的に裏付けられた情報だけでなく、経験談や主観的意見等も発信しています。
TMTLの特徴
テニスのみならずアスリートがその道で戦い、勝つ為には、技術練習だけでは不十分です。テニス界ではトッププロに限られますが、様々な専門家を“チーム”として招聘しています。主な役割として、技術スキルや全般的に選手をサポートし管理するコーチ。フィジカルトレーニングを主に担当するストレングス&コンディショニングトレーナー。ドクター。怪我や日々のコンディショニングをサポートする、アスレティックトレーナーックトレーナーや治療家。加えて、栄養士やメンタルトレーナーを付ける選手も増えてきています。さらに、テニスにおいては情報分析するアナリスト。道具も大きな要素ですから、スポーツメーカーやストリンガー。などなどサポートする専門家は多岐に渡ります。
TMTLでは、主にフィジカルトレーニングや怪我のサポートを中心にまとめています。またテニススキルに関しては、コーチ目線だけでなく、トレーナー、すなわち“身体の使い方”目線からテニススキルを紐解いていきます。
2020.3.3
持論からスタートします。現代テニスにおいて、もはやクローズドスタンスやオープンスタンスなどの概念は消えつつあると考えています。レベルが上がるにつれ、オールラウンドのプレーが必要とされる現代テニス。ストローク展開が早く、様々な球種や緩急などを交える攻防。これらに対応するために、~~スタンス、という考え方ではなく、どのような状況下でも軸ブレせずにショットが打てるか?!が大事になります。
例えば錦織選手のフォアハンドストロークの写真
一枚目の写真は、右足のかかとが浮いている事から、右足より左足に重心がより乗っています。しかし、右足も地面に接地しているので、両足重心且つ、やや左足軸という言い方になります。一方、二枚目は左足が浮いている事から、完全な右足重心といえます。スタンスは、その時々の状況で対応すべきで、ある時はクローズド・ある時はオープンで、といった具合。クローズドスタンスやオープンスタンスで打つ事が目的ではなく、そのボールに対して適切なスタンスや軸で打つ事が大事であり、目的であると考えます。大事な事はスタンスではなく、体幹軸が曲がらず、右足・左足関係なく、下半身が踏ん張ることが出来るか?である、と私は考えます。
良い姿勢で、下半身を踏んばらせる事が出来るか?で必要なスキルが、スクワットです。スクワットに関しての詳しい事は「テニスにおける重心の下げ方」で説明をさせていただいておりますので、是非ご参照下さい。その為、ここでは簡単な説明になりますが、スクワットは:①骨盤を立たせ(前傾位)②つま先はやや外側③膝がつま先より前に出ないようにする④重心を下げた時、膝と股関節の位置関係をまっすぐにする⑤重心が土踏まずに乗るようにする、を心がけてください。ちなみに前傾などの骨盤に関しては、「テニス選手の為の骨盤 前傾&後傾」をご参照ください。
スクワットは右足・左足、両方の足に体重を均等にかける事になります。構えやパワースタンスのように、両足均等に重心を下げる事もありますが、テニス中の多くの場合、右足・左足どちらかの足に体重が偏ります(比率)。片足スクワットができるという事は、すなわち右足・左足それぞれの足で、重心が支えられるという事になります。逆を言えば、片足スクワットができないと、片足で重心を支える事ができないという事になります。片足スクワットができない=片足軸でバランス良い姿勢が作れない=安定したスイングができない、という事になります。他にもバランス良く打てない・身体をうまく使う事が出来ない・振られた時にバランスを崩してしまう、という事にも繋がります。その為、テニス選手として、片足スクワットができる能力・スキルは非常に重要な事だと考えています。
片足スクワットの注意点は、両足スクワットと似ています。骨盤を前傾位、背筋を立たせ重心を股関節を意識しながら下げ、膝がつま先より前に出ない。加えて片足スクワットの場合は、重心を下げた時、つま先―膝―股関節が一直線にあるように姿勢を作ります。さらに、骨盤の上にお腹・胸・肩・頭が乗っているように意識します。軸というのは、下半身だけでなく、つま先から頭までを含めた体全体を意識して作ります。
片足スクワットの注意点は以下の通りです。
片足スクワットで難しいのが、上記の2と3で上げた「膝が内側に入らない」「お尻が外に流れない」です。特に女子選手が、重心を下げた時に膝が内側に入るケースが多いです。お尻が外に流れてしまう一番多い原因が、お尻の横にある中殿筋。筋力が足りない、うまく使えていない、もしくはその両方になります。それでは、写真で片足スクワットを確認してみましょう。
正しい片足スクワット 横から
・膝がつま先より前に出ていない事を確認
・骨盤が立ち、背筋が曲がっていない
・下半身(ふともも)の上に、上半身(胸など)が位置している。
つま先の延長上に赤線を引いています。この線より膝が前に出ないようにします。上半身の赤線は、骨盤が前傾位で背筋(体幹)が立っている事を示しています。
正しい片足スクワット 正面から
・つま先-膝-股関節が直線上に位置している
・膝が内側に入っていない
・お尻が外に流れていない
足裏の重心から、上に直線を引いています。ここで、足裏(つま先)-膝-股関節が直線上に位置している事を確認して下さい。実は上の写真、理想を言えば、お尻(臀部)がもっと内側にあるべきです!!後で説明しますが、私自身も中殿筋が弱い事がこれで分かります。
誤った片足スクワット 横から
・膝がつま先より前に位置している
・背筋がのけ反り、下半身の上に状態が位置していない事から、前重心が取れない
・膝を痛めてしまう可能性がある
・何よりこの姿勢ではしっかりスイングできない
膝がつま先より前に位置している事が確認できます。上記に挙げたように、これでは下半身に重心が乗らず、バランスが悪くなります。上半身も突っ立ってしまいます。仮にこのままスイングした場合、前重心が出来ない為、すっぽぬけるようなスイングになってしまいます。何より、膝を痛める可能性があるので、このような姿勢になってしまう選手は、注意しながら片足スクワットの練習をして下さい。
誤った片足スクワット 正面から
・膝が内側に入っている
・お尻が外に流れている
・下半身と上半身のバランスが悪い(上半身が外に流れている)
・膝を痛めてしまう可能性がある
足裏(つま先)から上に直線を引いています。膝が内側(ニーイン)に入り、お尻(臀部)が外に流れている事が確認できます。これは先述したように、怪我のリスクが上がります。このような選手が横に走らされ、外足軸で踏ん張り切り返そうと思っても、難しいと思います。まず、バランスが取れない。お尻が外に流れてしまえば、そのまま身体全体が外に流れてしまう事が想定されます。その為、うまく切り返しができないばかりか、体重が外にかかりすぎ、転倒・足首の捻挫にも繋がってしまいます。
テニスでは構えを除き、下半身で安定した重心を作り体幹軸を立たせ、且つ身体を捻じる事が必要とされます。片足スクワットは身体を前方向にした正面向き姿勢です。テニス選手は、片足スクワット姿勢+身体を捻じる能力が必要とされます。
片足スクワット状態で上半身を捻じる(右軸フォアハンドテイクバック姿勢)
試してもらうとご理解いただけると思いますが、バランスを保持する事が非常に難しいです。特に、捻じる時(テイクバック時)、足裏の重心が小指側(小指球)に位置しない様に気を付けてください。身体を捻じる時、同時に体重が小指側に位置すると、身体が外に流れてしまいます。上半身を捻じりながらも、母指球重心を意識して下さい。
正しい片足重心・軸を作る時に重要な筋肉の一つが、中殿筋です。中殿筋は、片足重心に限らず、個人的にテニスにおいてとても大切な筋肉の一つと考えています。中殿筋は、お尻の外側に位置しているので、十分な筋力と機能が備わっていれば、身体が外方向に流れてしまう事を防いでくれます。以下の写真は、中殿筋トレーニングの一例です。横向きで寝て、上の足を上げるだけなのですが・・・
いかがでしょうか?!赤丸をしてある場所が中殿筋なのですが、そこに負荷や筋肉を使っている(筋収縮)を感じますか?!感じない選手で考えられる原因は二つ。一つは、中殿筋が強く、このトレーニングでは負荷が弱すぎる。もう一つは、中殿筋が使えず、うまく筋収縮ができない。多くの選手は後者になると思います。実際、日々トレーニングを積んでいる、私が担当させていただいているプロ選手でさえ、この姿勢でかなり中殿筋がきつくなります。うまくいかない場合、足が前に出てしまっている事が多いです。まっすぐ上に上げないと、中殿筋が使えないので、是非練習してみてください。
他のコラムでもお伝えをしておりますが、何かフィジカル的にできない時に、=筋力が足りないと思ってしまう事があると思います。確かに筋力不足から出来ない事もありますが、使うべき筋肉が使えていない事も多いです。片足スクワット、改め片足重心・軸。これも身体の使い方が重要となります。なので、片足スクワットが出来ない場合、”練習”という考えでやってみてください。バランスが悪かったり、膝が中に入ってしまう、お尻が外に流れてしまう等、エラーが起こる場合は、例えば壁や椅子など、何か支えを使いながら行う。この種のトレーニングは、正しい姿勢でできるかどうか?!が一番大事なので、うまくできない場合は、どんどん補助を使って正しい姿勢を覚えて下さい。自転車の補助輪みたいな考え方ですね。
正しい片足重心・軸ができる事で、パフォーマンスは確実に変わるはずです。是非試してみて下さい!!